1/3と3/1と・・・

薄暗い部屋には彼だけしかいなかった。
スタンドはついているものの、その光だけでは部屋全体を照らすことなど不可能だった。
聞こえてくるのはときたま本をめくる音とシャーペンを走らせている音のみ。
本棚には医学書とも思える、ハンター資格でタダ、もしくは安く手に入ったのだろう本がぎっしりつまっている。
ふとシャーペンの音が止まった。
「はぁ〜疲れたぁ。」
声の主が大きく伸びをする。わりに背が高く、無精ひげが生えている彼はとうてい10代には見えなかった。
「ん〜、奴らと別れてもう2ヶ月かぁ。みんなどうしてるだろうな。特にあいつは・・・。」
ふと声の主の脳裏に1人の少年の顔が浮かび上がる。
金髪で目は緑に近く、男のくせにイヤリングまでしている。はじめ見た時は女だとさえ思っていた。
そんな彼の夢・・・というより野望は幻影旅団の抹殺・・・。
クルタ族という種族の生き残りだそうだが、何もそこまで思い詰めなくても・・・とレオリオは思っていた。
仲間を殺された憎しみも理解できなくはない。
しかしもう少しだけ肩の力が抜けたら・・・彼はそう思っていた。
「さ〜てっ。生き抜き終わりっと。未来の医者になるべく再び勉強を開始しなければ・・・。」
そしてまた先ほどの静寂が訪れる。その夜もまた、彼の部屋の電気は深夜まで灯っていた。


「ふうっ」
山奥の川辺にいる1人の少年が鎖から目を離し空を見上げた。
しばらくボーッと空を眺めている。
手には先ほどまでいじくっていた鎖。
もうかれこれ1ヶ月くらいの間この鎖をいじくっている。
念の修行は2ヶ月前からはじめ、今ではだいぶ使えるようになっていた。
「何時までこんなことをしてるんだろうな。」
金髪の綺麗な思わず見とれてしまうような美少年は苦笑した。
ふと彼の脳裏に1人の男の姿が浮かび上がった。
見たところ背は190以上で髭は生えており、初め見たときから今の今まで10代だと信じたことはなかった。
金、金、金・・・と最初はそればかりではっきり言って嫌いなタイプだった。
でもそんなにも金が要るのには理由があり、それを聞いて初めて彼を理解した。
診察代を受けとらない医者・・・それが彼の夢だ。
『カサッ』
紙が擦れる音がして彼はあの男のホームコードを持っていたことを思い出した。
何だか懐かしい感じのする字。
「そういえば私のホームコードをあいつは知らないんだったな。」
『野望の邪魔をしないためにお前のはいらない』・・・そう言って彼に受け取って貰えなかったのだ。
気付いたら手には鎖ではなく携帯・・・。
彼の勉強の邪魔になるから・・・と携帯をしまおうとはするが、気持ちとは裏腹に
指は彼のホームコードの番号を押していた・・・。


「お〜いっ!!クラピカァ〜、此処だぁ〜!!」
駅前の噴水の前で例の男は少年『クラピカ』を呼んだ。
ぱたぱたとそちらに走っていくクラピカ。
「久しぶりだな、レオリオ。」
例の男『レオリオ』はにっこり笑って答えた。
「おぅ。そっちも元気そうで何よりだぜ。」
久しぶりの『友』との再会に2人は心が躍った。
2人はすでに気付いていた。
会う相手が彼ではなかったら自分はここまで喜びはしなかっただろうことを・・・。

「しっかし驚いたぜ。お前の方から会いたいなんて言い出すなんてさ。」
「悪かったな、大事な勉強の時間を奪ってしまって・・・。」
「そんなことねぇよ。勉強ぐらい頑張ればすぐに取り戻せるからな。」
『にっ』っと笑うレオリオの顔にクラピカは一瞬見とれてしまった。
以前はいつでも見られた笑顔がまた今ここで見ることができた・・・それがクラピカには嬉しかった。
「・・・?どうした、クラピカ。」
はっと我に返ったクラピカはとっさに顔を背けてしまった。頬をピンク色に染めて。
そんなクラピカを見てレオリオもちょっとばっかし赤くなった。
・・・数秒の沈黙・・・。その沈黙を破ったのはレオリオだ。
「そうだ、クラピカ。俺の家に来ないか?何もないが1日泊まる分には差し支えないだろう。」
「・・・そうだな。そうさせてもらおう。それにお前がどんな生活を送っているかにも興味がある。」
「・・・なんかそれって俺が観察されるみてーじゃねぇか。」
2人が同時に笑いを浮かべた。

「・・・ここがお前の家か・・・。」
あまりの凄さにやっとの一言が言えたクラピカ。
部屋はちっこいアパートの一部屋。
そこに勉強机とベッドと天井ギリギリの高さの本棚にキッチン。
部屋中が散らかり放題で足の踏み場もない。
ごみを出しているのかどうかも分からず、カップラーメンの空きカップがところどころに落ちている。
「なんていう生活をしているんだ、お前は・・・。ハンター資格を使えば高級ホテルだって無料で使えただろうがっ!」
「気が散らないためには自分にとっていい環境を作るしかないんだよ。」
「これが『いい環境』か?」
「・・・ι」
クラピカの言葉にレオリオの言葉が詰まる。
彼はホテルなんかよりアパートのほうが性に合ってるから、とわざわざアパートを借りたのだが
片付けよりも勉強優先の生活になっていたのだ。
「食事もまともなものをあまり食べてないように見えるが・・・。」
やはり図星だった。レオリオは料理なんて一切やったことがないのだ。
「しょうがない。私が人肌脱ごう。お前はここを片付けろ。私は買い物に言ってくる。」
そのように言い放ったクラピカはさっさと部屋を出て行ってしまった。
クラピカの言うことに従わないとどうなるかは分かっているので早速レオリオは部屋の片付けに取り掛かった。
・・・しばらくしてクラピカがどうやって場所をしったのかは知らないが、近くのスーパーの袋をぶらさげ帰ってきた。
「お帰り、クラピカ。」
「ああ。それより今からキッチンを借りるぞ。」
そういうが早いかクラピカはキッチンを使って何かをし始めた。
鍋やフライパンを取り出し、包丁やまな板を洗い始め、米まで洗い始めた。
レオリオは一連の行動を見て料理をしてくれるのに違いないと察してまた片付けに取り掛かった。

日が暮れた頃、やっとクラピカが話し掛けてきた。
今まで彼の邪魔をしては悪いと思い、ずっと黙ってレオリオは待っていたのだ。
「この部屋に食器などはあるのか?」
「たしかここにあったような・・・。」
レオリオが探し始めて10分ほどした後、たいして使われていないと思われる食器が見つかった。
「ちょっと待ってろ。今そっちに運んでやる。」
『そっち』というのは片付けの最中にレオリオが発見した折りたたみ式のテーブルのこと。
こんなの持ってたんだなぁ、とレオリオは再び思い返していた。
ふと漂う、久々のご飯の香り。
それと混じって味噌の香りや煮物のような香りも漂ってきた。
「ほら、夕飯だ。」
クラピカが料理を運んでくる。
白いご飯に豆腐の味噌汁・・・それに肉じゃがだ。
「クラピカって男のクセに料理上手いんだなぁ。感心するぜ。」
この『男』という言葉にクラピカの心がちょっと痛んだ。
「どうした?なんか暗い顔してるぞ?」
数秒黙っていたクラピカが口を開いた。
「お前に会いに来たのには他の目的があったんだ・・・。お前にしか話せないことだ。」
急に深刻な顔になったクラピカにレオリオはちょっと戸惑った。
「俺にしか話せないって・・・そんなに重大なことなのか?」
「私にとっては重大だが、お前にとってはそうでもないかもしれない。とにかく聞いてくれるだけでいい。私は・・・私は・・・。」
ちょっとためらったクラピカをレオリオはじっと見つめる。
「私は・・・本当は・・・女だ。」
意外な言葉にレオリオはパニくった。
そんなレオリオを尻目にいきなりクラピカは上着を脱ぎ始めた。
「な・・・何やってる!?クラピカっ!」
「いいから黙ってろ。」
あのクラピカの特徴的なマントに白い長袖の服などを脱ぎ、表れたのは・・・明らかに女の胸と思われるものに
さらしが巻かれているクラピカの身体だった。
「これが・・・証拠だ・・・。」
レオリオは何も言えなかった。
何故今まで女だったことを隠していたのか。
何故自分にだけはそのことを言うことが出来るのか・・・。
レオリオの呆気に取られた表情を見て、クラピカは話し始めた。
「女だと思って旅団に手加減されるのは悔しいからな。
 それに私はお前なら信用できたし、お前にだけは言わなければならないと思っていた。
 私は・・・私は・・・お前が・・・その・・・」
「好きだっ!!」
顔を真っ赤にしてうつむきながらも何かを伝えようとしていたクラピカの言葉を遮ってレオリオは叫んだ。
そしてクラピカの腕を引き、包み込むようにして抱いた。そして囁くように話し始めた。
「ハンター試験で出会ってからしばらくして、自分はお前のことが好きだと分かった。
 笑顔のクラピカを見てると男だったことを忘れてしまうぐらい・・・。
 だからそんな時、つい無意識のうちに自分の言わば『愛情表現』ってやつを出しちまって・・・。
 でも所詮相手は男だ。1/3も伝わってないと思った。
 でもお前は女だった。だからもしかしたら今までの自分の気持ちが伝わってるんじゃないかと思って・・・。」
するとクラピカは身体をレオリオから離し、苦笑いを浮かべて言った。
「男の振りをしていても所詮私も女のはしくれだ。お前の気持ちは痛いほど伝わってきた。
 1/3どころじゃなく、それこそ3/1くらい・・・。
 今までお前の気持ちに答えてやれなくて悪かったな。」
ここまでいうとクラピカの目からは涙が零れていた。
「なんか・・・心許せる奴がいるのはいいことだな・・・。安心したせいで・・・涙が・・・」
涙声で、でも笑ってクラピカは言った。
するとレオリオはクラピカの涙を拭いて言った。
「俺の前ではどんな『クラピカ』も見せてくれよ。落ち込んでるのも、情けないのも・・・。俺はお前の『心許せる奴』だろ?」
そう言われたクラピカはどこか嬉しそうな顔をして「ああ。」と答えた。
この答えを聞いてレオリオは、「やっと肩の力を抜くことができたな。」と安心した。

なんだかなんとも言いようがありません。
キスにも行ってない・・・ιしかもちょっぴし中途半端かも・・・。
でもこれはこれでいいのですっ!!

この小説は700番をGETしてくださったしほ様のリクエストでレオクラ(クラピカ♀)の小説です。
レオクラは初めて書きました。なのではっきり言ってお気に召すかどうか・・・。
なんか心配ですYO!

小説については特に語りません。
特に分かりにくいところはないと思うし・・・(いつもは分かりにくいっ!?)

しほ様のみお持ち帰り可です。(というか持ち帰る物!?)


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